sugar spot
でも、椅子のことばかりに気を取られているわけにもいかない。
全体のオフィス改造のコンセプトについては、先方との打ち合わせが必要だし、社内でも工務部や設計部を交えてチームでのすり合わせが必要。
そういう会議の司会進行を務めるのも、進捗報告をするのも緊張で、最初は特に大変だった。
出だしから噛み倒して、進行がグダグダになってしまった1回目の全体ミーティングの時は、地面にめり込むほど落ち込んだ。
でも結局は場数をこなすしか無いのだと、浴室や寝室でプレゼンの原稿データを入れたスマホ片手に練習して、なんとか乗り切る、そんなギリギリの日々を経て。
「す、すごい…!!」
「サンプルなのにこのクオリティ。どう?」
「天才です、工場の方々が!!」
「そこは俺も含めてくれて良いと思うんだけど?」
そして漸く、工場でクッションが装着された状態の最終段階の椅子のサンプルがオフィスに届いた。
見た目はそこまで斬新なデザインとは言えない。
でも私はこの子を抱きしめたくなるくらいには、愛着がとてつもなく湧いている。
敷波さんにすぐにメールで写真と共に連絡をすると
《完成したんですね!ありがとうございます。
今すぐ僕も見に行きたいですが、
今日は打ち合わせが詰まっているので…。
このまま引き続き、進めてください。
どうぞよろしくお願いします。》
とGOサインをいただいた。
「フロア全部、この椅子に統一するとして、
納期考えたら、工場への発注も急いだ方が良いね。」
「はい。実は前々から、もう制作は進めてOKですって敷波さんから許可いただいてました。
工場の方にも、連絡してます。」
「そっか。じゃあ順調に進みそうだな。
梨木さん良かったね。」
微笑んでくれる南雲さんも、相当この件に関して一緒に手伝ってくださった。
言葉では言い尽くせない感謝を込めて深々とお辞儀をしたら、「営業部から無茶振りされるの、デザイン部は慣れてるので」と戯けて言われてしまった。