sugar spot
「え。もう今月、終わるじゃん。」
恐らく今後のスケジュール確認のために、手帳を見ていた南雲さんが、呟いた言葉。
動揺しないよう必死に自分のタブレットの画面に視線を集中させた。
「…そうですね。」
月末の今日は、華の金曜日だ。
社会人が1週間で1番浮き足立つ曜日であり、
私は、もう1つ理由があって、例に漏れ無い。
《今日、現場から直行するから駅前に18時半で。》
朝、そのメッセージを確認した時から、早鐘のような胸の鼓動をずっと感じてはいる。
「…梨木さん、なんか嬉しそう。」
「え!?」
だけど仕事中にだらしない顔はしないと、気を引き締めていた筈なのに、あっさり目の前の彼に指摘されて戸惑いが大きく溢れた。
「……俺も週末デートしたいな。」
「お、俺"も"ってなんですか。」
「え、梨木さん今日デートじゃないの?」
「……ち、違いますよ。」
「ご飯2人で食べに行くとかでも、
立派なデートだと思うけど?」
「……そうなんですか?」
「あ、ご飯に行くんだ。」
「………」
私はやっぱり、馬鹿なのかもしれない。
こんなに華麗に鎌をかけられる人間、
珍しい気がする。
誤魔化すように、現段階の設計図をタブレットに映して
「ここに配置予定の家具について良いですか」
と険しい顔で質問したら、やはり愉しそうな笑顔でなかなか取り合ってくれなかった。
先輩方の透視能力は、本当に侮れない。