sugar spot
◽︎
責任の所在を明らかにする。
その重要性を、研修の時に
あの能面に出会って知った。
だけどその結果、うちではなくて
先方のミスだったと、明らかにした時。
その後起こることについての覚悟が、
私はきちんと出来ていなかったのだと
痛感してしまった。
社用のスマホを握りしめたまま、私はデスクを離れた休憩スペースから、もうずっと、動けずにいる。
ついさっき電話にて終えた会話を思い出す度に、
辛くて、痛い。
“梨木さん。この度は、申し訳ありませんでした。“
「…いえ、そんな、」
私と敷波さんのメールのやりとりを、
部長に転送した。
特注のあの椅子について、サンプルを作る段階から、きちんと残っていたので、私が独断で発注をかけたのではなくて、△社の合意があってのことだったと、そこの誤解は解くことが出来た。
でも。
それは同時に、今回の椅子の発注をめぐる責任は、
GOサインを出した敷波さんが背負うことになることも、意味していた。
“船木もね、最初はとても乗り気だったんです。
オフィスのリニューアルも、特注で家具を作ることも。“
「……、」
“だけど、新しく何かをするのは、大変ですね。
当然、コストをどれだけ削減していただいても
費用はかかる。
それだけじゃ無い。各部署への新しいオフィスに関する情報発信も必要になります。
そういう労力について、説明をする度に
少しずつ、船木は反応が渋くなっていました。
でも僕は、梨木さんや南雲さん達が
どれだけ頑張ってくださっているのか
1番近くで見ているから。
今更、絶対引き返したくは無い。
あの特注の椅子の件も、絶対進めるんだって、
どこか躍起になっていました。“
胸が、痛くて張り裂けそうだ。
私は、こんなに何度も彼に会って、話をしていて。
クライアントが抱えていたことに、
何一つ気づいていなかった。