sugar spot


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責任の所在を明らかにする。

その重要性を、研修の時に
あの能面に出会って知った。

だけどその結果、うちではなくて
先方のミスだったと、明らかにした時。

その後起こることについての覚悟が、
私はきちんと出来ていなかったのだと
痛感してしまった。



社用のスマホを握りしめたまま、私はデスクを離れた休憩スペースから、もうずっと、動けずにいる。

ついさっき電話にて終えた会話を思い出す度に、
辛くて、痛い。


“梨木さん。この度は、申し訳ありませんでした。“

「…いえ、そんな、」

私と敷波さんのメールのやりとりを、
部長に転送した。

特注のあの椅子について、サンプルを作る段階から、きちんと残っていたので、私が独断で発注をかけたのではなくて、△社の合意があってのことだったと、そこの誤解は解くことが出来た。


でも。

それは同時に、今回の椅子の発注をめぐる責任は、
GOサインを出した敷波さんが背負うことになることも、意味していた。



“船木もね、最初はとても乗り気だったんです。
オフィスのリニューアルも、特注で家具を作ることも。“

「……、」

“だけど、新しく何かをするのは、大変ですね。

当然、コストをどれだけ削減していただいても
費用はかかる。
それだけじゃ無い。各部署への新しいオフィスに関する情報発信も必要になります。

そういう労力について、説明をする度に
少しずつ、船木は反応が渋くなっていました。

でも僕は、梨木さんや南雲さん達が
どれだけ頑張ってくださっているのか
1番近くで見ているから。

今更、絶対引き返したくは無い。

あの特注の椅子の件も、絶対進めるんだって、
どこか躍起になっていました。“



胸が、痛くて張り裂けそうだ。

私は、こんなに何度も彼に会って、話をしていて。

クライアントが抱えていたことに、
何一つ気づいていなかった。

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