sugar spot



「あ、梨木いた!
あんた、来週の人事面談の希望日時、早く提出して…、」


座って動けずにいた私を見つけて、快活な声でそう話しかけてきたのは、人事の吉澤さんだった。

今日もハイウエストのパンツスタイルが、後ろですっきり纏められたローポニーテールによく似合っている。

「おつかれさま、です。」

「……あんた、何その顔。」

異変に気づいた彼女は、怪訝そうに言って、私のすぐ隣に腰を下ろす。


「なんか、割と大きな案件任されて頑張ってるって聞いたけど。何、バテてるの?」


明るく尋ねてくれているのに。
聞き馴染んだ声ほどスッと心に入り込んでしまう。

それと同時に、視界が滲んだ。


「……だめかも、しれません。」

「え?」

「………案件そのものが、
だめに、なるかもしれません。」

「……」

「私じゃ、ダメです。」

「…どういう意味?」

「クライアントが抱えていた悩みにも気付けない、うまく立ち振る舞ってフォローも出来ない。

……他の方だったら、絶対、
こんなことになってません。」


クライアントと素敵な関係なんて、
どうやったら築けるのか、分からない。



今回のことを知った南雲さんは、

「梨木さんは間違えてないよ。
もしきちんと調べず謝罪してたら、それはこの件に携わったうちの人間全員に降りかかる問題になってたかもしれないんだよ。」

そう言ってくれたけど。




本当に、間違えてない?

___だって、現に。

敷波さんを1人、苦しい状況に追い込んでしまっているのに?

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