sugar spot
「でも、もうあんまりウカウカしてられないんだよ私。」
「なんで。」
「いつハイスペックな美女が現れるかも分からないし。」
「お前は何を言ってんの。」
たしかに私は、何を言ってるんだろう。
でも奈憂に言われた通り、そんな危険はこの男に関してなら、いつでも隣り合わせにある気がする。
眉が情けなく下がったけど、でもこの男は「待つ」と言ってくれたから。
今度こそ別れを切り出そうとしたら、思いの外すぐ側まで近づいていた男に「梨木」と名前を呼ばれた。
「…待つけど、待たされ過ぎるのは無理だから。」
「え、どっちなの。なんで。」
「そこは察しろよ。」
何をと、尋ねる前に腰を屈める男がそっと前髪に触れてくる。その動作一つであっという間に身体がカチリと止まる私は、この男への恋情に支配されてしまっている。
細い指でそっと避けて、そこに丁寧なキスを落とされてしまえば、当然のように身体に熱が駆け巡った。
「……なに。」
直ぐに離された筈なのに、私の額に何をしてくれたのか、ずっと熱さが続いている。確かめるように両手でおでこに触れながらその意図を尋ねても、有里は珍しく口角を上げて見つめてくるだけだ。
本当に、なんてことをしてくれるの。
睨みつけて文句の一つでも言ってやりたいし、こういう行動の理由を、そろそろちゃんと教えて欲しい。
「言っとくけどこれ、焚き付けてるから。」
「はあ?」
「"ちゃんと"答え合わせするには、お前が仕事終わらせるしか方法無いんだからな。頑張れば。」
「あんた、性格どうなってんの。」
やたらと挑発的な言葉にやっぱり悔しくなってそう言っても、男の珍しい笑顔はまだ崩れていない。
そんなの、私が抱えてることを、一刻も早く、頑張ってなんとかするしか無いじゃない。
この男のペースに乗せられている気しかしなくて悔しいけれど、敷波さんに連絡しようと、結局勇気にもなってしまう自分に呆れながら苦笑いを溢した。
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