sugar spot





「____どうされました?」

焦りを募らせる中で、頭上からそんな声が届いた。

恐る恐る顔を上げると、私の様子を心配そうに見守るスーツ姿の年配の女性。


勿論見知らぬ顔で、「いえ、何でもないです。」と伝えたかったけど、気分の悪さから上手く言葉が出なかった。

ふるふると首を横に振って、気にしないでください、をなんとか表現したけれど、「顔色悪いですよ。」と続け様に指摘されてしまう。


確かに、お店が立ち並ぶこんな賑やかな場所でしゃがみ込む女は、気になってしまうものだろうか。

なんと説明しようかと言いあぐねていると、同じようにしゃがみ込む女性が、ぽん、と肩に手を置いてきた。


見ず知らずの人間を気遣うなんて、優しい人もいるものだなあと、感謝を伝えようとすると、


「…人類みんな、色々ありますよね。」

と、やけに寄り添う声でそう告げられた。




……じ、人類…?

「分かります。生きてたら色々あります。私もずっと辛いことだらけで、貴女のように凹むことも沢山ありました。」


女性は、私と視線を合わせることなく遠くを見つめてうんうん、と頷きつつ語り始めている。

「いえ、私は凹んでいるというよりはお酒に完全に酔ってるだけなんです、くだらなくてすみません。」と否定したいけど言葉はやはり出てこない。



「…でもね、これ。
このパワーストーンのキーホルダーを持つようになってから、人生が変わり始めたんです。

貴女もきっと、これを持っていれば全てが良い方向に向かいますよ!」


キラキラと良い笑顔でいつの間に取り出していたのか、石のついたキーホルダーを見せながらそう言われ、顔が完全に固まった。




_____ちょっと待って。


「(私いま、なんか売りつけられている…!?)」

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