sugar spot
進みを止めようとしない男の背中を見つめていたら
ただそれだけで瞳の縁に涙が溜まってしまう。
そのままお店を抜けてしばらく、お互いに無言で歩き続けて辿り着いたのは、広い公園だった。
テニスコートが併設されていたり、アスレチックのようなものもあるからお昼時や土日なら人も多いのだろうけど、平日のこの遅い時間は、静寂に包まれている。
ゆらりと曖昧に照らしてくるだけの外灯の明かりでは、私も、男も、ほとんどその闇の中に姿を溶け込めてしまえる。
「、」
漸く立ち止まった男が振り返ってきた時、「有里」と名前を呼びたかったのに、繋いでいた手を容易く引き寄せて、痛いくらいの力で抱きすくめられてしまった。
速さを保つ鼓動がピッタリと重なっていて、ぎゅう、と腕に力を込める男もそれを確かめているようで、いよいよ涙が頬を伝う。
その気配に勘づいているのか、優しい手が後頭部に回されて私の髪をそっと宥めるみたいに梳く。
「お前は、なんでそんな飲み会の度に絡まれんの。」
「……、知らない、」
今日と、あの歓迎会の時のことを指しているのだろうか。
そんなこと私に聞かれても分からない。
というか、パワーストーンを売りつけてきたあの人達と、長濱を一緒にするのは若干、可哀想な気もする。
腕を少しだけ緩めて、私を見下ろす男と視線が真っ直ぐにぶつかる。
もうとっくに何粒も落ちていた涙を、ぎこちなく指の腹で拭ってきた。
「…顔赤いけど、酒飲んだ?」
「飲んでない。もう、やめた。」
「……、」
「無理するのは、やめたから。
“お前は、お前だ“って、言ってくれて、
すごく、嬉しかった。」
告げ終えたら、結局拭ってくれている指の隙間をぬうように、涙はまた、溢れてしまった。