sugar spot
すごくすごく、面倒な考えだと自覚している。
相手の気持ちを確かめるみたいな、そんなことを態々尋ねてどんな反応をされるかも、怖い。
「……ちょっと奈憂。今の発言録音した?」
「間に合いませんでした…悔しい。」
「…もう良いです。
揶揄われると思ってました、忘れてください。」
案の定、好き勝手に話す亜子さんと奈憂にツンとした声で記憶の消去を要請すると
「ば花緒。私いま、揶揄ったんじゃ無いわよ。」
「…え。」
何故だか、亜子さんも不服そうな顔をしていた。
「可愛いし愛しいし、本当馬鹿だなあと思っただけよ。」
「いや最後ちゃっかり貶されてますけど。」
思わず、すかさず突っ込んだら、
「違うよ花緒、貶してないよ。
“尊い馬鹿だ“って意味だよ。」
「フォローどころか失礼を重ねてると気付いてくれてる?」
奈憂が真剣な顔で頷きながら諭してきて、それにも突っ込む羽目になった。
この人達の感覚、どうなってるのだろう。
もっと顔を顰めて本気で返答をしているのに、楽しそうな微笑みの中の亜子さんに「花緒」とまた名前を呼ばれる。
「もっと正直に、ぶつかれば良いじゃない。」
「……、」
「今の私や奈憂の感想みたいに、どういう風に有里君があんたの言葉を受け取るのか、何を思うのか、聞かないと分かんないでしょ。」
いつもふとした時に、あの男のことを考えてしまう。
思い出そうと努力なんかしなくても、心にずっと居る存在であることを、その度に思い知る。
「花緒」って呼ばれたら今でもドキドキする。
…というかいつも、態度じゃ伝わってないかもしれないけど、全然いつも、凄くドキドキしてる。
会える時間は嬉しくて、会えない時間は寂しい。
とても単純なカラクリの中に私は身を置いている。
そういうの全部、ありのまま伝えたら
あの男はどんな反応をするんだろう。
「本心を伝えるの、勇気が要るけど。
でも有里君も案外、私たちと同じように"俺の彼女可愛い〜〜"って心の中で悶えてるかもしれないよ。」
「あ、あの能面がですか?」
それは絶対に無いけど、ちひろさんの言葉に似合わなすぎる想像をして、少しだけ力が抜ける。