sugar spot



恋人同士の戯れで片付けるにはあまりに力が強い。

急になんだと、その腕を掴んで睨みあげたら向こうも同じように私に鋭い眼差しを向けている。


「痛いんだけど。」

「お前は、どんだけ振り回してくんの?」

「…はい?」


声に不機嫌さがたっぷりと含まれている。

でもその言葉はよくわからないので素直に聞き返したら溜息を溢された。
今この男、絶対"馬鹿"って心の中で言ったと思う。


「急に家に行くって言い出したと思ったら、やっぱり来ないって言ったり。」

「…それは、」


その通りだけど。

だけど全然、そっちだって
気にしていない素振りしか無かったのに。



「しかも、一杯目からビール頼んだって聞いたけど。お前はなんでそう学習をしないわけ?」


「…な、なんで知ってるの。」


今日の女子会の出来事を、どうして今ここに来たばかりの男が知っているのだろう。


目を見開いて近くで見つめていると、また長い溜息が落とされる。

頬をつねられていた手がそこでやっと離れていったと思ったら、今度は頬を両手で覆われて結局、拘束されていた。



「そんなに飲んでみたいなら、俺と居る時にしろよ。」

「…え。」

「わざわざ外で飲む必要、無いだろ。
顔もすぐ赤くなるし、馬鹿だし。」


馬鹿は今、関係があったのだろうか。


「私今日、飲んで無いんだけど。」

「は?」


誰かさんとの会話を思い出して、ビールを注文はしたけれど結局押し止まったのだと伝えるのは、あまりに恥ずかしいし憚られる。


素っ頓狂な声で顰めっ面が濃くなった男は、本当にどうして此処にいるのだろう。



「……あんた、残業でもしてたの?」

「いや。長濱達と飲んでた。」

「え。」

やっぱり、そうだった。
この男はこの男で華金を楽しんでいたのだと考えると、より一層今のこの状況が掴めない。


「…でも、連絡があったから抜けてきた。」

「連絡…?」

少し歯切れが悪い言葉になりながら伝えられた言葉を繰り返す。



どういうこと、と再度尋ねようとした時、

「あ!!!
推しの、彼女とのイチャイチャシーンを目撃してしまっている…!神回決定。」

「イチャイチャにしては、なんか睨み合ってない?」

すぐ傍から、とても聴き馴染みのある、推しに関することだと情緒が煩くなるで有名な女と、私を隙あらば揶揄うで有名な先輩の言葉が飛んできた。
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