sugar spot
「あの、タクシーとかお呼びしますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」
私と能面男の側で、中腰の姿勢のままにそう話しかけてくれる店員さんに何とか笑顔を作って断る。
こんなところ、情けな過ぎて先輩達に知られるわけにはいかない。とりあえず早く戻らなければ。
「ご迷惑おかけしてすみませんでした。」と貼り付けた笑顔で重ねて告げると、店員さんは戸惑いつつもお店へ戻って行った。
その後ろ姿を見送って、足に鞭を打って
ノロノロと立ち上がる、と。
「っ、」
重だるい全身を支える力が瞬時には備わっていなくてそのままバランスを崩した私の腕が、ガッ、と掴み上げられた。
いつの間に同じように立ち上がっていたのか、案の定、能面男の冷えた瞳に見下ろされていた。
天敵にこんな風に支えられてしまっている。
本当、情け無い。
「…もう、一生の不覚、」
「お前、他に言うことあるだろ。」
舌打ちと共にそう言われ、ぐ、と言葉が詰まった。
…確かに、終始"馬鹿"しか言われてないけれど、あの変な男女から助けて?くれたのだろうか。
店員さんも呼んでくれた。
すごくすごく不服、だけど。
「…ねえ。」
「何。」
「…感謝は、してる、一応。」
「………」
私の素晴らしく捻くれたお礼を受けて、有里は綺麗な顔を至近距離のままに、ある意味歪ませている。
「はあ?」という声が今にも聞こえてきそうだ。
「でも、先輩達には、言わないで。」
「……」
「知られたくない、し。」
お酒が弱いって知られて、気を遣わせたくない。
これから営業の仕事をしていく中で、なるべく足枷になることは減らしたい。
「…潰れる方が迷惑なんだけど。」
「……ちょっとずつ、トレーニングするし。」
「お前、古淵さんの話を信じてんならまじで馬鹿だな。まあ馬鹿だけど。」
今、私が元気な状態だったら
腕を振り解いてそのまま直ぐに殴っている。