sugar spot
ふと地面を見ると、あの女性が持っていた筈のパワーストーンが雑に転がっていた。
人生を左右する力を持ってるって豪語してたくせに
放り出して帰るなよ、と突っ込みつつも、
「…お酒強くなる、とかだったら買ったかもなあ。」
有里に未だ腕を掴まれた状態のまま、
ポロッとそんな本音を漏らしてしまった。
そこでやっと我に帰る私は、
まだやっぱりアルコールに相当支配されている。
まずい。これ以上、天敵に弱みを見せるわけには。
「_____お前は、"誰"を目指してんの?」
感情が掴みにくい、低くて抑揚の無い声。
形の整った瞳に鋭く射抜かれて、
身体が一瞬、固まってしまったかと思った。
「…だ、れって…」
「酒が強くなったら、"誰か"になれるわけ?」
急に、何。
なんなの、この男。
じ、と視線を決して逸らさない男の髪が、その瞬間
夜風にふわりと靡いて少し揺れた。
その乱れ方までが綺麗で、腹立たしい。
答えに詰まって、その眼差しから咄嗟に逃れたくなった私が「離して」と訴えようと口を開くと、
「梨木さん、大丈夫…!?」
切迫した声が私達の後ろから届いた。