sugar spot


◻︎

そうして過ごすことになった昼休みの間、隣の女と全く予期していなかった空気を創り出している。


「………あんたもうちょっと愛想良くできないの。」

「人のことより自分のパソコンスキル心配しろよ。」

「で、問2はこれ、何をどうすんの!?」

「お前、教えていただく立場であることを常に意識しろよ。」





何故、ほぼ今日初めて話した女とこんな風に睨み合うことになってる。


当然の疑問を自分の中で問いかけても、答えは勿論返ってこない。

自分の口調に微塵の優しさも感じられないのはそうだが、この女の応戦スキルも、どうなってるんだと思う。


どこが、“誰にでも愛想良く“だ。

先週この女に抱いた印象の一つが、既に崩れ去ってしまった。



__でも。


何とかワークを全て埋め終えた後も、女が昼食に向かうことは無かった。


「穂高〜めっちゃ面白い!!ちょっと来て!」

「……ああ。」

同期男子で何か盛り上がっている輪の中心にいる長濱に呼ばれ、流石に行かないのは不自然だと立ち上がる。



「…ありがと。」

キ、と上目遣いで厳しい眼差しと、険しさの濃い表情のまま、でもしっかりお礼を告げた女は、特に俺からの返事を待つことなく再び視線を戻す。


パソコンを閉じ、ルーズリーフへ凄い剣幕でずっと何かを記入し続けている。


傍のバインダーの中には山ほどのルーズリーフが既に
綴じられていて、それが始まったばかりの研修でのメモだと悟った瞬間。


やはり勝手に抱いていた印象がまた一つ、完全に崩れ去った。


何が、“そつ無くこなす“だよ。

____この女、死ぬほど不器用なんじゃ無いのか。



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