sugar spot





"でも、先輩達には、言わないで。"

"知られたくない、し。"


一応、私の頼みを聞いてくれた、らしい。

「二次会とかも無いから、あとちょっとだけ付き合ってね」と笑った枡川さんと、能面男を追うようにして再びお店の入り口へと向かう道すがら。


すらっと高い身長が着こなすスーツは、当たり前のように細く長い脚を強調している。


「……おい。」

「、」


ぼうっとそれを見つめていたから急に振り返ってそう声をかけられて、肩が分かりやすく上がった。


「な、なに。」

「俺、言ったよな。」

「……は?」

「"足、引っ張んな"」


"__お前、足引っ張んなよ。"


配属を言い渡された日にこいつに浴びた言葉が、能面のまま、丁寧に繰り返された。

ずしん、と胸に重くのしかかるのは気のせいだし、握っていた拳に力が入ったのも気のせいだ。



「…そんなの、分かってる。
これからは、あんたの世話にならないようにやるし、安心してよ。」


それはそれは迷惑そうに言われて、必死に平静を装って言葉を吐き出した。



分かってる。

こんな風に、歓迎会で生ビールで勝手に酔っ払って?

変なパワーストーン売りつけられて、就職して東京に出てきた田舎者だから上手く撃退だって出来ないし?

先輩に心配かけるし、あんたにもフォローさせて。

自分は駄目だって十二分に分かってるけど。



「(…そこまで嫌そうにしなくても良いじゃん。)」


そんなことをこの男に思う私は、
やはり酔っ払ってしまってるのだろうか。



アルコールは涙腺も刺激するなんて、知らなかった。

視界がぐにゃりと歪んでぼやけて、私は男を置いて全部を振り切るように歩みを進めようとした。



___のに。


「……お前、絶対分かってない。」


再び腕をぐ、と掴まれて呆気なく行手を阻まれる。







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