sugar spot




「そうだ梨木さん。明日のお昼は空いてる?」

「…お昼ですか?」

「うん、忙しい??」

「いえ!!ガラ空きです!!」


勢いよく告げると、彼女はふわっと可愛く笑ってくれたけど、その後どこか気まずそうに目を細めた。


「あのね、古淵から"梨木っちとランチ行きたい!"ってチャットが来てて。」

「え!ほんとですか、是非。」

「良かったじゃあ返事するね。」

「はい、お願いします!」



「……4人で行こうね。」

「4人…?」



枡川さんの声が急速にしぼんで、そのまま前を向いたままトントン、と誤魔化すように書類を整えている。

「私と古淵、梨木さん、……あと有里君。」

「え!!!!」


急に登場した天敵の名前に声が大きくなる。



歓迎会の時は、「仲良しだね」なんて全く当てはまらない感想をくださっていた枡川さんは、流石にそこからの日々の様子を見ていたら、私とあの男の関係性に勘づいてくれたらしい。


「……枡川さんずるいですよ、後出し。」

「だって最初に言ったら梨木さん来てくれないと思って。」

「……枡川さんとご一緒できるなら、敵が居ようとも、行きますよ…」

「いや敵て。そして顔と声が険しすぎる。」


絞り出すような声でそう告げたら、クスクスと枡川さんが楽しそうに笑う。


「…というか、古淵が梨木っちって呼んでるのに、私が梨木さんっておかしいよね。なんか嫌だ。」

「話変えましたね。」

「私も梨木ちゃんって呼ぼう。」


うんうん、と頷いて彼女は、「私のこともなんとでも」と提案してくれた。それは嬉しいけど。


ふう、と1つ息を吐き出してからチラリ後ろを見やると、営業の別の課のデスクが広がっていた。


その中で一際目立つ、背の高い男。

それこそ、直属の先輩である古淵さんと何やら資料を一緒に確認していた。




"足引っ張んなよ"


「(…言われなくても分かってるわアホ。)」


ほんと、あんな男に負けてられない。
乱されたりしない。

ランチくらいなんだ、平然とした顔で行ってやる。
優雅に微笑み送るくらいの余裕見せてやる。

そう気合いを入れてから、山積みの名刺の仕分けに集中した。
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