sugar spot
そこから更に数分後、運ばれてきたカルボナーラはすごく美味しそう。
もう美味しいご飯食べて、ちひろさん達の話にだけ意識を強く持っていよう、真正面の男は壁か何かだと思おうと決意して、フォークを手にした時。
「ど、同期でも色々だな!
枡川みたいにラブラブなとこもあるし!」
はははと、乾いた笑顔でまだパスタは来ていないのにフォークを既に手にしている古淵さんが告げた言葉に、体が分かりやすく固まった。
「「…………ラブラブ?」」
そして、聞き逃せなかった単語を繰り返したら、目の前の壁と言葉が重なってしまった。
「古淵…!」
次いでちひろさんの焦ったような声が届いて、古淵さんは「…はっ!!!!」と何かに気づいたように自分の口を両手で塞ぐ。
「ごめん枡川!!
瀬尾と枡川はいつも仲良しなのになあ最高カップル!とか思ってたら声に出てた!!!!」
「ありがとうだけど、今もずっと全部声に出てるよ!?」
「………カップル…?」
再び古淵さんの言葉の中の単語を繰り返したら、先輩2人とも焦った顔でこちらを見ていて。
……え、ちょっと待って。
瀬尾さんというのは、私が研修でもお世話になっているデザイン部の瀬尾さん、で間違いないと思う。
お2人の同期だと言っていたし、
『梨木さんの先輩も、よく専門用語に苦戦してたな。』
図面について教えてくれてた時、彼がそう言いながら優しい笑顔だったことを思い出した。
「…え!!!あれは彼女を思い出されてた表情だったんですか!?」
古淵さんに負けず劣らずの声が出たことに気がついて、無意味にすぐ体を縮こまらせる。
「…なんの話!?」
と青ざめたちひろさんに、何でもないです、とぶんぶん首を横に振った。
その後、観念したちひろさんが、同期歴3年目にして漸く交際を始めたと、歯切れはとっても悪いままに説明してくれた。
「まじで推しの同期カップルなんだよな〜」
と、屈託なく笑う古淵さんに、ちひろさんは「恥ずかしいからやめて。あと古淵絶対、瀬尾に怒られるよ」と困ったように笑っていて、とても微笑ましくて。
この人達は、凄く仲良しなんだな、と、
そう思ったところまでは良かった。
___良かったのに。
「………いいなあ。」
ぽろっと、本当に、ぽろっと。
何の意識も持たずに口から溢れた言葉に私が驚いた瞬間、先輩2人が驚いたようにこちらを見たのが分かった。
「え!!!?梨木ちゃんも同期ラブしたい派!?」
そして興奮したように古淵さんにそう尋ねられて、それを頭で理解した瞬間、カッと顔に熱が集まった。