sugar spot
『きゃー!!とても大変!!!
しかし落ち着け。俺はもうこんなことでは揺るがぬ。
穂高。俺は様々な失敗を経て、屈折した精神を手に入れた。』
『(……不屈の精神、じゃないのか。)』
『あ、もしもし配送センターさんですか、
お疲れ様です、営業の古淵です。
Aジャンル家具担当のきくちゃん居ま…あ、きくちゃん!?お疲れ様です!
ごめんきくちゃん、
今日○小学校に配送してもらったチェア、
色指定を赤と青、俺、間違えてた〜〜〜
…え?あ、そうなの?そっちの手違いか!珍しい!
配達してもらうとしたら
在庫確保含めてどのくらいかかる?
あーなるほど!わかった、
ちょっと俺は先生たちに事情まず説明するわ〜
よろしくお願いします!』
古淵さんとの会話まで丁寧に話す男に、結局作業の手を止めて聞き入ってしまっていた。
「…じゃあ後日、また配送してもらったの?」
「……俺は、あの人の怖さを見た。」
「どういうこと。」
『お世話になってますー!!
本当に申し訳ないんですがこちらの手違いで、選んでいただいたものと違う色の椅子が届いてまして…
すみません!
すぐに対応しますので
また改めてお時間いただけますか。
で、もしよかったら折角なので色は違いますけど
一脚、職員室に搬入して、デスクとのマッチング具合を一度見て頂けたらと思います!』
「そう言って、本当に自分で一脚、意気揚々と職員室に運んで、」
『お〜デスクとの親和性は大丈夫そうですね。
座り心地もよかったら見てください!
……なんか、俺も絶対カラーは青一択だと思ってましたけど、赤色も鮮やかでこの職員室に似合いますね!!』
「…結局学校の先生達も、なんかあの人の雰囲気に流されて、購入予定の半分の15脚は、赤色でその日に搬入した。」
「え!?」
『配送センターが、青色の椅子の在庫的に15脚ならすぐ明日にでも搬入できそうって言ってたからさあ。
ここで半分を赤色に誘導するのは、俺の頑張りどころよ〜
ちなみに、配送センターのきくちゃんは、俺がミスする度に助けてくれるスーパー物流管理のおじさん。たまには俺もあの人の役に立たないとなあ。』
「……強引過ぎるでしょ。」
「だから怖さを見たって言ってんだろ。」
信じられない営業方法に、唖然とする。
そんなのどの研修を受けても
絶対に得られないスキルだ。
だけど、いつもぺかぺかの笑顔のあの人なら、全然想像ができてしまうところに、思わず、ふと声を出して笑ってしまった。