sugar spot
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「す、すごい人……、」
もう午前中のセミナーにより気持ちはブルーまっしぐらではあったけど、なんとか身体に鞭を打って、説明会の会場にやってきた。
スーツの人と私服の人、半々という感じだろうか。
同じ入口を目指して同じ方向へ歩く全員が、就職活動に臨む人たちだと考えるだけで、仲間意識なんかより怖さが前に出る。
登録した就活サイトが主催のこの説明会には有名な企業が多数ブースを作って参加している。
もう、どこからまわればいいのか皆目検討もつかない。スマホ片手に恐る恐るMAPを確認しつつ顔を上げた時だった。
___"居心地の良さで、「働く」は決まる。"
そんな文字が見えて、思わず足を止めた。
とある一角に立つ看板に大きく書かれたのは、このブースを作っている企業のキャッチコピーの一つらしい。
「…オフィス家具メーカー…」
スマホで企業名を調べたら、業界についてもすぐに出てきた。今までどちらかというと、消費者に直結できるようなBtoCの企業にばかり目を向けていたから、全然、調べたこともなかった。
ブースは午後の部が開始したばかりなのに賑わっていて、どうやら人気の企業らしい。
業界のシェアも高い割合を占めている。
気になるけど、良いのかな。
全然知識ないし
午前中のセミナーの時みたいに否定されたら、___
「興味持ってくださってますか?」
「……、え、」
いつの間に近づかれていたのか、俯いていた私を覗き込むようにひょこっと隣から人影が視界を占領する。
「こんにちは。良かったらお話しませんか?」
とても綺麗な顔立ちの女性だなと認識した次の瞬間には、もう私に屈託のない笑顔が向けられている。
"お話聞いていってください!!"
と、いろんなブースから声をかけられることは多かったけど。
「…一緒にお話、するんですか…?」
「しましょう!
なんかナンパみたいな話し掛け方になってしまった。
でもうちは、一方的に説明する時間より座談会の時間を多く取ってるんです。」
「…あのでも私、
全然この業界の知識とかまだ無くて、」
「ええ!?知識沢山持たれてたら、
私が話すこと無くなります!?」
「……た、たしかに…?」
「良かったら、こっち座ってください。
あ、ちなみにこれうちで作ってる椅子です。」
「可愛いです。
すいません、製品も何も知らなくて知識ゼロで…」
「この椅子は昨日勉強したばかりホヤホヤなので
私、語れてしまいます。セーフ。
知識ゼロ、助かります。」
謎の言葉と共に、クールな顔立ちをちょっとあどけなく破顔させて私を誘ったこと。
___きっとちひろさんは、覚えてないと思う。