sugar spot
「質問無ければ、私がペラペラ喋ります。」
「……」
用意された長テーブルの端っこで、そう告げた枡川と名乗る女性と向かい合う。
隣をちらりと確認すれば、テーブルに間仕切りはあるけど、私と同じように腰掛けて社員の方の話を聞いている就活生が何人か確認できた。
私は本当にこの女性と、マンツーマンで話をするらしい。
「あ、私だけじゃなくて、他の社員にもよかったら後で話しかけてやってくださいね。」
ふわっと表情を柔らかく崩して、話しかけるなんてまるで友人のような誘いと共に、おそらく企業情報の掲載されたカタログを持ってきてくれた。
なんの話しようかなあと、とても楽しそうに視線をページへと落とす彼女はやはり、この仕事が好きなのだろうか。
「……志望動機、聞きたいです。」
ぽそっと、大きな会場を埋め尽くす人が為す音で騒がしい空間に漏らした言葉を、彼女は逃さず拾ったようで、そのまま私へと視線を上げた。
「…すいません、すごく捻りのない質問で…、」
志望動機なんて、もう今日だけでもきっと沢山聞かれているだろう。
センスのある問いを出せない自分が申し訳なくなった瞬間、枡川さんは「やっぱりそこですよね」と笑った。
そして、カタログから手を離して、改めて私と向き合う。
「……なんか、仕事行く時にテンション上がること欲しくないですか?」
「…え?」
「なんでも良いです。
でも朝眠いなあ、だるいなあってどうしても重い身体をちょっとだけ助けてくれるとっかかりがあったら、良いなって思うんですよね。」
「……、」
「職場がオシャレだったら、
ちょっとテンション上がりませんか?」
「…上がるかも。」
素直に答えたら、また笑ってくれた。
「“働いてる自分、悪くないかもな“って、そういう気持ちを少しでも助けられる空間を創れたら、最高です。
オフィスをつくるって、
そういう意味でも素敵だなと思って。」
「………すごいなあ。」
セミナーで言われた。
《先輩社員の方にも礼儀は忘れず、しっかり話を聞いて、メモを欠かさずに取って、感想は的確に。
次の話に繋げられるようなスムーズさも必要。》
だけどそんな約束事は全て投げ出して、気づいたらまた、ただポツンと零れ落ちるような感想を述べてしまっていた。