sugar spot
「…それが、理由ですか?」
「そうですね、私の一番の志望動機です。」
「……、」
「くだらないでしょう。
でも、私にはとても、大事なんです。」
___この人、私の心が透けて見えるのだろうか。
“そんな簡単なことじゃ、
やっぱり、ダメなんだなあ…、“
カフェで1人、実感したばかりの気持ちを、まるで優しく撫でられたような感覚だった。
このまま、あと少し気を緩めたりしたら、絶対に泣ける自信がある。
驚かせてしまうと、必死に誤魔化して
持っていたノートにメモを取ろうとしたけど。
「…メモ、取れないです。」
「いや、こんな話でメモ取るのやめてください!?」
自分からしたくせに「人事の怖いお姉さんに殺される」と、辺りを見渡して焦る姿に、思わず顔が綻んだ。
「…私も本当は、理由、他にあるんです。
他の人からしたら、すごくくだらないって笑われると思うんですが、私からしたらとても、大切なんです。」
キュ、と、この就活もお守りのように持ち歩いている大好きなバンドのCD購入特典のクリアファイルを握りしめた。
「……そのファイル。」
「はい?」
「ついさっき、ここで話聞いてくれた方も持ってた気がします。可愛いなーと思って見てたので。」
「え!?本当ですか?」
今や大人気になってしまったバンドだけど、初期の頃の、知る人ぞ知る時代の特典で、だからこそ私は大事にしている。
その人も、相当ファンなのだろうなと思うと何故だか勝手に嬉しくなってしまった。
「“バカ正直“じゃ、居られないかもしれないですが、なるべく素直な気持ちを話したいって思える時が、就活でもきっとあります。
今日私が“この方になら話しても良いかな“って思えたみたいに。」
「…まさかドラマに憧れて、というエピソードが聞けると思いませんでした。」
「でも、こんな私のくだらない外ランチの憧れに飽きずに付き合ってくれる同期も居るよ…ありがたい。」
「……同期、仲良いんですか?」
楽しそうだなと純粋な気持ちで出た質問に
彼女は今日1番、優しく微笑んだ。
「こんなこと思うって全然考えてもなかったし、
直接言うのは照れるけど。
本当にね、同期って、かけがえない存在だよ。」
確かめるみたいにゆっくり大切に紡いでくれた彼女の言葉は、就職した今でもずっと心に残っている。