sugar spot


◽︎


「……花緒。アーリーは?」

「知らん。」

「ね〜〜同じオフィスで働いてるんだから
一緒に来るでしょう普通。」

「…何故?殴り合えって
言われてるようなものなんだけど。」

「いや、その思考回路が何故?」


出会って開口一番、仲良し同期から出たのは私のことではなくてあのムカつく男のことだった。


出来る限り感情を抑えて淡々と告げると、盛大な溜息と共に奈憂はやはり「前途多難すぎ」と嘆く。
意味がわからない。



「あ、梨木と芦野だ。」
「久しぶり〜」
「元気?」
「梨木、有里とバチバチらしいじゃん〜」



「………。」

奈憂と一緒に居酒屋の広い座敷へ入った瞬間、そんな風に声をかけられ、最後の言葉に先程から顰めた顔色が、より不穏になった。

なんで別オフィスで働く同期達にも、あの男との不仲が伝わってしまっているのか。


「お陰様で。」という謎の返事をしながら奈憂と広いテーブルに隣同士に座る。



「なんだっけ、アーリーの直属の先輩。」

「…古淵さん?」

「あの人、別のオフィスでの打ち合わせの時も、後輩のあんたらのこと可愛い可愛い言ってるんだよねえ。私も聞いたことある。」


"でもなーーーなんでか分かんないけど、
バチバチなのよあの2人。

花火飛んでんだよな〜"


「…花火は打ち上げてないけど。」

「火花散らしてるのが、先輩にも伝わってるのまずいでしょ?なんでそんな日に日に悪化するの。」

厳しい顔で、私におしぼりを回してくれる奈憂にうまく言葉が出ない。


「…あれは、常に私の天敵なの。」

「一晩一緒に過ごしたのに?」

「っ、!?」


突然の問いかけに、大きな声を出さなかったのは本当にファインプレーだった。

ぐりん、と隣の奈憂を見向くと、通常運転の彼女は呑気に飲み放題メニューに視線を落としている。


「なんの話!?」

「え〜?夜通し一緒に仕事したんでしょ?」

「…何で知ってるの……」

「企業秘密。
(島谷さんと連携してるって言ったら殴られそう)」


信じられない情報網に驚きのまま問うけど、
適当にかわされてしまった。


「まあそこは後々聞くとして。
()緒、何飲む?」

「その呼び方やめてよ!?
レモンサワー!!!」

「…え。この期に及んでまだ、お酒飲む気?」

やっぱりば()緒だ、と訝しげにこちらを見つめる奈憂をこちらこそ睨み返す。
< 62 / 231 >

この作品をシェア

pagetop