拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
ホテル街に二人でいたのは何でだとか、いろいろ聞きたいことがあったが、さっき飲んだビールのせいか頭と口がうまく回らない。二人が寄り添っている姿をみて、私がどんな思いをしていたか知らないくせに、と悔しくて泣きそうになってくる。

「何で私のせい?私が話しかける隙なんて全く無かったじゃん。気を遣って先に帰ってきたんだから感謝してほしいくらいだわ」

「先に帰ってなかっただろ?あんなところで何してたんだよ。誰と一緒だった?」

・・・ホテル街で会ったから、私が誰かとホテルから出てきた後だとでも思ったのだろうか。ったく、自分と一緒にしないでほしい、と思ったら急に頭に血が上ってきた。

「一人でゲーセンで遊んだ帰りでした!誰かと一緒にしないでくれる?」

「変な言い方すんなよ。お前が先に帰るから俺一人で送ってきただけだろ」

送ってきただけ・・・それならホテル街にいる必要はないのに。私とタイミング悪く会ってしまったから気まずくなり二人で過ごすのを諦めたのではないか、と思ってしまう。
牧野くんの言ってることなんてあてにならない、と俯き不貞腐れていると、頭をガシっと掴まれ無理やり上を向かされた。

「お前、酔ってんな。気分悪い?」

急に優しく言われれ、酔いのせいもあり泣きそうになってくる。そんな私の表情に焦ったように続けて言った。

「大丈夫か?吐きそう?ごめんな、こんな時間に呼んで悪かったよ。
こんな薄着で体冷えちゃったな」

ふわりと抱きしめられて、びっくりして・・だけど嬉しくて、私もギューッと抱き着くと、頭の上で牧野くんがふっと笑った。

「大丈夫か?歩ける?」

「歩ける」

菅原さんと一緒にしないでほしい。そもそも菅原さんだって本当に酔っぱらっていたかどうかなんてわからない。牧野くんとくっつきたくて酔ったふりしているかもしれないし、と腹黒いことを考えて、まあ、私も人のこと言えないか、と一人であれやこれや考えてると、牧野くんが小さい声で言った。

「先帰るとか、信じらんねえ。てっきり誰かと一緒にバックレたと思っただろ」

「誰かって誰よ」

「ずっと向かいの席の男としゃべててたじゃん」

「小島くんのこと?」

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