僕等はきっと、満たされない。

最近は私のアパートより

宙くんのアパートに来ることが多い気がする



「晴夏、寒くない?」



宙くんはいつも

私の近くにストーブを置いてくれる



「うん、大丈夫
ありがとう」



宙くんはいつの間にか

私のことを晴夏って呼ぶようになった



「来週からまた京都行くんだ」



「どれくらい行ってくるの?」



「2週間ぐらいかな…
早く終われば、終わり次第帰って来るよ」



宙くんが

2週間いない



「お土産買ってくるね」



「うん、ありがとう」



京都のお土産は

いつも決まってあの人の香りだった



「最近、晴夏、お香の匂いしないね」



「そーかな…
そーいえば
前に買ってきてもらった箱
まだ開けてないかも…」



あの人の月命日は必ずお香を焚いてた



それから会いたくなった時

火をつける


前よりも少なくなった気がする



泣くことも

前よりなくなった



それでも忘れることはなくて

あの人を想うとまだ胸が熱くなる自分がいる



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