エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「そうだったな。過ぎたことを引きずるな、と教えたかったんだ。森尾に励まされる日が来るとはな」


フッと笑った彼が、メイン料理の牛フィレ肉のポアレ、マスタードソースがけにナイフを入れた。

カトラリーの扱い方が自然で堂に入っている。

海外と日本を行き来するのが日常であるからだろう。

メインの終わりまでくる頃には、瑞希はすっかりこの時間を楽しんでいた。

他の人からすれば、なにを硬い話をしているのかと思われるかもしれないが、瑞希の心は弾んでいる。

興味がある話題だから、ということだけではない。

専門的な話を、外交官をリタイアした自分にも話してくれるのが嬉しかったのだ。

美味しい料理と久々のアルコールも心をほぐしてくれる。

三十年物のブルゴーニュ産の赤ワインを飲んでいると、フランスの街角の景観や香りまでが思い出され懐かしい気分にさせられた。

(研修時代は楽しかった。常に成長を求められるのは大変だったけど、充実感と達成感は他では得られないものだった)

素晴らしい人生経験をさせてもらったと感謝はしても、あの頃に戻りたいかと問われたらノンと答える。

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