エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 布施の腕も蛭間に釘を刺すような言葉も、愛情があるゆえの嫉妬かと思いたかったが、単に目的達成のための牽制かもしれないと瑞希は考える。

 目的とは、海翔を自分の手で育てるために、瑞希と結婚することだ。

「そう、ですか……」

 蛭間は半信半疑と言った顔を瑞希に向ける。

 無言で問われた瑞希は困り顔になったが、戸惑いつつも頷いた。

(結婚はまだ決められないけど、蛭間さんの気持ちには応えられないし、そういうことにしておこうか)

 蛭間があからさまに肩を落とす。

 落ち込んでいるところ申し訳ないが、瑞希はテーマパークの誘いを断らなければと口を開きかけた。

 けれども先に蛭間が「さっきのことはなかったことにして」と言い、ゆっくりと背を向けた。


「仕事に戻るよ。お疲れ様」

「お疲れ様でした……」


 黒服の背中がいつもより小さく見え、すぐに建物の陰に消えていった。

 瑞希は傷つけてしまったことを心苦しく思いつつも、ホッと息をつく。

 その直後に肩に回されている腕に力がこもり、体の向きを変えられた。

 布施に正面から抱きしめられて、またしても心臓が大きく波打つ。

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