エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 布施は今日もスーツ姿で、その上に黒い上質なコートを羽織っている。

 瑞希の見開いた目に、青いネクタイの結び目がアップで映っていた。

 男性物の爽やかな香水の香りもほのかにする。

(私、なんで抱きしめられてるの……!?)

「森尾」

 耳に忍び込む声に、不愉快さが滲んでいる。


「あの男に言い寄られていたのか?」

「ち、違います。遊びに行かないかと誘われただけで……」

「行きたかった? 俺が来なければ、その誘いを受けていた?」


 瑞希は布施の胸を押して抱擁を解き、端整なその顔を仰ぎ見た。

 彼の目に嫉妬の色を見つけたかったのだ。

 けれども、覗かれまいとして目を逸らされる。

「余計な質問だった。忘れてくれ」

 問いかけを撤回した後に彼は、「スマートじゃないな。焦ってしまった。余裕がなくて……」と顔をしかめる。

 布施が弱音を吐くのを初めて聞いた。

 瑞希は目を瞬かせてから、フッと笑みをこぼす。

 すると、「なんだよ……」と横目で睨まれた。

「布施さんでも焦ることがあるんですね。それが私のことでなんて、意外で面白いです」

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