エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 布施が不満げな顔をして前髪を掻き上げた。

 外交官時代、到底かなわないはずだった上司をやり込めた気分になり、瑞希は少々調子に乗ってしまう。

「今日の布施さん、なんだか可愛いです」とクスクス笑えば、口を曲げた彼の腕に再び捕らえられた。

「きゃっ」

 両腕に閉じ込められて慌てる瑞希を、布施がやり返す。

「可愛いのはお前だ」

 ゾクリとするような低音ボイス。

 明かりに照らされる瞳が甘く煌めき、距離を詰めてきた。

 耳元で聞いているかのような激しい動悸の中で、布施の唇が瑞希の額に触れた。

 たちまち赤面する瑞希を、布施がククッと意地悪く笑う。


「額でその反応か。口にしたらどうなるんだろうな。試してみようか?」

「だ、駄目ですよ。ここは私の職場なんですから」


 周囲に人の姿はないが、いつ誰が通りかかるかわからない場所でキスはできないと瑞希は考える。

 その直後に、人目につかない場所でならキスしてほしいのかと自分に指摘を入れ、(そういうことじゃなくて)とひとり心の中で慌てていた。

「離してください。人に見られたら困ります」

< 146 / 224 >

この作品をシェア

pagetop