エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
(生理痛の時に毛糸の腹巻をしているとか、小腹が空いた夜中に海翔のお菓子を食べちゃって泣かれたこととか、去年のヒーローショーで子供に交ざって握手の行列に並んだこととか、それから……)

 母への口止め項目を頭にリストアップしていると、布施が瑞希の手を握った。

 そのまま手を引いて夜道を歩きだす。

 大きくて温かい、頼りたくなるような手だ。

 好きな人に手を握られて、胸がときめかないわけがない。

(夫婦でも恋人でもないのに、いいのかな)

 喜びと、彼の術中にはまってはいけないという思いが交錯する。

 そんな瑞希の戸惑いは伝わったようだ。

 迷いを断ち切れというかのように、布施が握る手に力を込めた。



***

「ふーん、それで攻めあぐねているのか。森尾ちゃんって、意外とツワモノなんだな」

 霞が関の外務省庁舎の休憩所で、小堺がそう言った。

 時刻は二十時を回り、周囲に人はいないが、多くの者が残業中だ。

 布施も缶コーヒーを一本飲んだら仕事に戻るつもりでいる。

 そして半分を飲んだところで小堺が現れ、瑞希とのことを根掘り葉掘り聞かれたところであった。

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