エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
「そうなんだけどさ、着込むから体感としてはそんなに寒くないんだ。東京の寒さは微妙で、ヒートテックのタイツを穿きたくない」

「だから寒いというのか。おかしな理屈だ」


 気楽な会話をしつつ駅前に着いたら、ひとりの女性がふたりに近づいてきた。

 怪しげなアンケートか、キャッチセールスの類だろう。

 そう予想して女性の顔を見た布施であったが、ハッとして足を止めた。

 襟にファーのついた白いコートを羽織り、長く艶やかな黒髪を上品に結った美人。

 彼女は、京香である。

 京香の二重の大きな目が柔らかく弧を描き、赤い唇が開いた。

「潤一さん、お久しぶりです。偶然ですね」

 心臓が痛いほど驚いた布施だが、作り笑いには慣れている。

 一切の動揺を見せずに微笑み返し、「京香さんでしたか。お久しぶりです。お元気そうで安心しました」と社交辞令を返した。

 すると、京香の顔が曇る。

「元気に見えるかしら? そうでもないんですよ。最近、悩んでいて……。潤一さん、少しお話しませんか?」

 京香の視線が小堺に振られた。

 帰ってくれと言わんばかりに。

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