エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 婚約中、彼女を伴っての飲食は高級店ばかり利用していたから、今日も当然そういう店だろうと期待していたのかもしれない。

「なにか?」

 彼女の心を見透かしていても、布施はあえて不思議そうに問いかけた。

「いえ、なんでもありません……」

 京香は黙って自動ドアの内側に足を入れる。

 抗議をすれば布施が帰ってしまうと思ったからなのか……はたしてその通りであるのだが。

(既婚女性とふたりきりで高級レストランには行けないだろ。知人に見られたら、不倫を疑われる。京香さんは、それがわからないような人ではないと思っていたが)

 京香の夫は、総理大臣も務めた大物政治家の孫で、当人も国会議員を務める鴻池だ。

 妻が夫を裏切ったという記事が出る懸念もある。

 万が一そうなれば、京香が悲惨な目に遭うだろうし、布施としても巻き込まれたくない。

 だから逢引きなどと思われないように、席も道路に面した窓際のカウンターを選んだ。

 店内は九割方席が埋まっていて、カウンターに並んで座るふたりの両隣にも客がいる。

 それについても京香は顔を曇らせていた。

< 156 / 224 >

この作品をシェア

pagetop