エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
 ケビンは顔を引きつらせて立ち上がると、なにも言わずに一気に走り去った。

 潤一から殺気を感じたのかもしれない。

 ふうとため息をついたのは潤一だ。

 帆香は目覚めていて、止まってしまったベビーカーに文句がありそうな泣き声を上げる。

 瑞希は足の痛みも気に留めず、急いで帆香を抱き上げた。

 オムツなどのベビーグッズを入れたバッグを持ってくれていた海翔は、「疲れた」とベンチに腰を下ろし、潤一はまだケビンの去った方を睨んでいる。

「瑞希をひとりにするんじゃなかった」

 そんな夫の様子に、瑞希は目を瞬かせてからクスリとした。

「潤一さん、怒らないで。ここはパリで、彼はパリジャンですもの仕方ないです」

 パリジャンだからというより、フランス人男性の一般的な特徴として、女性を口説くのがうまい……というのがあるだろう。

『ここはパリだから』

 この数日間、夫婦の間でよく出る言葉に潤一の眉間の皺が解けた。

「そうだな。ここはパリだ」

 夫婦がおかしそうに笑っていると、退屈そうな海翔が不満を言う。

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