エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
『森尾に会いたいんだ。それが理由で誘うのは駄目なのか? お互い構えずに気楽に会おう。短時間、喫茶店でも構わないから』

(相手方に会わないことには、なにも始まらない場合の交渉術。ただ会いたいだけというのも、気楽にというのもきっと嘘。布施さんの下で学んだから知ってるよ。それでも私は……)

瑞希は胸の奥に喜びを感じていた。

樽の栓が外れて流れ出るワインのように、それは芳醇に広がって、心を酔わせようとする。

(会いたい。布施さんへの恋心は完全に消したつもりでいたのに、簡単に蘇ってしまった。会ってはいけないあなたに、すごく会いたい……)

気づけば「日中に少しだけでしたら」と口走っていた。

電話の向こうからは『ありがとう』という言葉と、安堵の吐息が聞こえる。

四日後の十五時に瑞希の職場近くのカフェでと約束し、電話を切った。

(約束してしまった。布施さん相手に否定し続けることができる? できないじゃなくやらないと)

液晶画面が暗転し、意識は隣の居間の賑やかさに移る。

調子外れで舌足らずな、可愛いエンディングソングが聞こえた。

その後には「ばあば、もういっかい!」とせがむ声が。
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