エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
どうしていいのかわからなくなり、眉尻を下げて傍観してしまった。

それに気づいた布施が、戦いごっこを止めた。


「今日はもうおしまいだ」

「ヤダー!」

「また今度遊ぼう。おじさんを倒せるように練習して強くなっておいて」

「うん!」


布施の大きな手が海翔の頭をワシワシと撫でる。

柔らかで細い髪の毛をグシャグシャにかき回し、それを手ぐしですくように整えていた。

海翔はくすぐったいのか、ウフフと笑っていてすっかり布施に懐いてしまった。

立ち上がった布施が「またな」と海翔に言い、背を向ける。

数歩、駅方向へと歩いてから、思い直したように顔だけ振り向いた。


「また連絡する。たぶん二週間後くらいに。また会おう」

(そんなこと言われても……)


約束できない瑞希は、困り顔で黙っていた。

いつの間にか西の空が茜色を帯びている。

布施の表情が切なげに見えるのは、夕日のせいか。

ゆっくりと前を向いた布施が、歩きだす。

その背中が道の角を曲がって消えるまで見送ったら、海翔が「なぁに?」と紙袋に興味を示した。

布施にもらった出張土産だ。

「なんだろうね」

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