エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
紙袋から出すと、箱に入った焼き菓子の詰め合わせであった。

「これ有名店の美味しいお菓子だ」

確か、今の職場に最寄りの駅構内にもテナントが入っていた。

(出張先ってどこ……?)

出張土産というのは嘘で、やはり海翔の顔を確かめるための口実としてこのお菓子を買って、後をつけてきたのではないだろうか。


「たべりゅ」

「帰ってからね」


海翔には笑みを向けているが、瑞希は頭を抱えたい思いでいる。

布施はきっと今後も追及してくるだろう。

有能な彼を相手に、どこまで嘘をつき通せるかと不安になるのであった。



それから十日が過ぎ――。

「ありがとうございました」

瑞希はエレベーター前で頭を下げ、客を見送った。

勤務先ホテルの四階、賑やかだった廊下がエレベーターの降下と同時に静かになる。

毛足の短い絨毯を黒いパンプスで踏みしめ足早に引き返すと、畳の広間に戻った。

繋げられた八つの長座卓に、二十四席の座椅子。

座卓の上には、会食後のお膳が並んでいる。

そこで鏑木がひとり座椅子から片づけを始めており、瑞希は食器に手をかけた。

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