エリート外交官の激愛~秘密の一夜で身ごもった子ごと愛されています~
この和室は主に法要後の会食で利用されるが、今しがた帰った客は聞いたことのない新興宗教団体であった。

法衣姿の中年男性の説法の後に宴席が設けられ、その配膳を瑞希と鏑木のふたりで担当したのである。

鏑木がクスクスと可愛らしく笑いながら、話しかけてきた。

「宇宙のことわりを初めて解き明かしたとか、どんな病も治す神がかりの法力とか、怪しさ百パーセントでしたね」

瑞希は「しっ」と鏑木を止めた。


「忘れ物をしたと引き返してくるお客様もたまにいるから、駄目だよ。そういう話は裏でね。確かにうさんくさくて、どうしたら信じられるのか信者に聞いてみたくなったけど」

「森尾さんも結構、言っちゃってますよ」

「あ、ごめん。つい本音が」


ふたりで笑った後は、またせっせと手を動かす。

女性客の席は大抵きれいに食べきっているが、男性客はお残しが多く片付けにひと手間かかる。

特に手つかずのデザートを捨てねばならないのは心苦しい。

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