純愛
「あ…。」
隣でカンナとつばきも同じ声を出した。水の中から引き上げたポイは、真ん中から大きく半紙が破けて、でろんとした紙から水が滴り落ちた。
三人ともその穴から互いを見遣って、笑っている。おじさんも「ヘッタクソだなぁ。」と苦笑いした。
おじさんはオマケと言って、ビニールの袋に金魚を三匹入れてくれた。全部赤くて小さいやつ。今日はオマケを貰ってばっかりだ。
「つばきにあげるよ。ね、透華くんいいでしょ?」
「うん。つばきが欲しがってたんだし。」
つばきは目線の高さまでビニールの袋を持ってきて、その小さくて狭い世界を泳ぐ金魚を眺めながら「ありがとう。」と言った。
櫓でやっていたイベントも全部終わっていて、電飾だけが照らされたままの櫓の周りは一気に静かになっている。
夏祭りもそろそろ終わろうとしているのか、自治会や婦人会の人達が出店の片付けを初めている。
「つばき、りんご飴いいの?」
金魚を眺めたままのつばきの顔をカンナが覗き込んだ。つばきは金魚からカンナに視線を移して言った。
「ねぇ、海の方、行かない?」
「海?」
カンナが不思議そうに返事をする。
このグラウンドの一番奥は、船着場とグラウンドを区切る様に、浅い雑木林みたいになっていて、そこを抜けると船着場がある。船着場と海岸を隔てる防波堤は、距離にすると結構長い。一番端がこの裏の海岸だとすると、そこから防波堤の上をずっと歩いて、遊具のある公園の裏を通り、最終的にはバス停の前の坂を登り切った橋の所まである。
船着場、グラウンド、公園、その公園からは左右に分かれていて、この周辺をグルっと取り囲む様に作られている。
「もう暗いしやめようよ。」
カンナが言ったけれど、つばきは「大丈夫だよ。海に入るわけじゃないし。」と言って歩き出してしまった。
雑木林は本当に浅いから数歩で抜けてしまうけれど、「こっち側」に来ると、「向こう側」の喧騒は小さい音になった。
防波堤には登らないで、そのまま目の前の船着場を、つばきはボーッと眺めている。
隣でカンナとつばきも同じ声を出した。水の中から引き上げたポイは、真ん中から大きく半紙が破けて、でろんとした紙から水が滴り落ちた。
三人ともその穴から互いを見遣って、笑っている。おじさんも「ヘッタクソだなぁ。」と苦笑いした。
おじさんはオマケと言って、ビニールの袋に金魚を三匹入れてくれた。全部赤くて小さいやつ。今日はオマケを貰ってばっかりだ。
「つばきにあげるよ。ね、透華くんいいでしょ?」
「うん。つばきが欲しがってたんだし。」
つばきは目線の高さまでビニールの袋を持ってきて、その小さくて狭い世界を泳ぐ金魚を眺めながら「ありがとう。」と言った。
櫓でやっていたイベントも全部終わっていて、電飾だけが照らされたままの櫓の周りは一気に静かになっている。
夏祭りもそろそろ終わろうとしているのか、自治会や婦人会の人達が出店の片付けを初めている。
「つばき、りんご飴いいの?」
金魚を眺めたままのつばきの顔をカンナが覗き込んだ。つばきは金魚からカンナに視線を移して言った。
「ねぇ、海の方、行かない?」
「海?」
カンナが不思議そうに返事をする。
このグラウンドの一番奥は、船着場とグラウンドを区切る様に、浅い雑木林みたいになっていて、そこを抜けると船着場がある。船着場と海岸を隔てる防波堤は、距離にすると結構長い。一番端がこの裏の海岸だとすると、そこから防波堤の上をずっと歩いて、遊具のある公園の裏を通り、最終的にはバス停の前の坂を登り切った橋の所まである。
船着場、グラウンド、公園、その公園からは左右に分かれていて、この周辺をグルっと取り囲む様に作られている。
「もう暗いしやめようよ。」
カンナが言ったけれど、つばきは「大丈夫だよ。海に入るわけじゃないし。」と言って歩き出してしまった。
雑木林は本当に浅いから数歩で抜けてしまうけれど、「こっち側」に来ると、「向こう側」の喧騒は小さい音になった。
防波堤には登らないで、そのまま目の前の船着場を、つばきはボーッと眺めている。