離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「和歌、あそこ見て」
慶次さんが夜空を指さす。なにも見えないと思っていたけれど、彼の示す方向に小さな星が瞬いているのが見える。
「珍しいですね。星が見えるなんて」
「そうだな。普段は夜空なんて見ないからな。だから気が付かない。俺たちの関係もそうだったんじゃないか」
「え、どういうことですか?」
わたしは彼を見たが、彼は夜空を見上げたままだ。
「和歌が離婚を切り出した理由がわからない。俺は大切にしていたつもりだったけど、和歌が求めているものがわからなかった。ちゃんと和歌のことを見ていなかったってことだろう?」
「それはそうかもしれないですけど……」
でもわたしから理由を言うのはつらすぎる。慶次さんがわたしと義務で結婚生活を続けているのが申し訳なく思うからなんて言えない。きっとそう言うと彼は否定するだろう。
七尾さんとのことだって、彼の口から直接聞いていないからまだ耐えられる。でも本人の口から聞いてしまったら?
他の人を想っている好きな人のそばで暮らすのはつらい。しかも夫婦だなんて。
黙り込んだわたしを気にすることなく彼は話を続ける。
「和歌はよく俺のことを見てくれていたのにな。トマトが嫌いだなんて射水でさえ知らないと思うぞ」
わたしだけが知っている彼の素顔。それを聞くとなんだかうれしくなった。
「こうやって今まで知らなかったことを知る機会ができるなんて、ロスタイムも悪くないな」