離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

「そろそろお休みになられてください」

 七尾がいつにも増して怖い顔で俺を睨む。

「ああ、この仕事が片付いたら」

「そのセリフ聞くの何回目だと思うんですか? いい加減にして」

 秘書ではなく大学時代のような口調になっている。これは本気で怒っているな。

 確かにこのところなにかに没頭したくて一心不乱に仕事をしてきた。それに付き合わされる七尾もたまったものじゃないだろう。

「君は適度に休んでくれていい。自分のことは自分でできる」

「そういうことを言ってるんじゃありません。ご自分がひどい顔なさってるのにそろそろ気付いてください」

 ブラックアウトしたタブレットの画面に映る姿は確かに疲れがにじみ出ている。しかし家に帰って休んだところできっと以前のようにはならないだろう。

 デスク下のごみ箱にはエナジードリンクとゼリーのごみ。数日間こんな暮らしをしていたら、周囲がわかるほどくたびれてしまったらしい。

「とりあえず、シャワーだけ浴びたらまた出社する」

 家に帰る気にもなれない。会社近くのホテルの部屋が今のすみかだ。思い出すものがなにもない部屋は、今の俺にとってありがたかった。

「戻ってこなくていいですから、お休みください。社長は今日の午後からオフです。もう若くないんですから、徹夜なんてやめてください」

「勝手に決めるな」

 七尾の小言をかわし、俺はホテルの部屋に移動する。中に入って一目散にシャワーブースに向かう。
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