離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 手早くシャワーを終えると、すぐにスーツに着替えて出社の準備をした。

 スーツに袖を通し、スマートフォンを手に取る。すると画面に不在着信の通知が届いているのを見つけた。

「和歌!」

 すぐに電話をかけ直すと、数回コールしたのちに彼女は応答した。

「和歌。電話もらっていたみたいだけど」

 柄にもなく緊張した声になった。けれど彼女の方も言葉を選びながら慎重に話をしようとしている。

《離婚届、受け取りました》

「そうか」

《あの……最後にわがまま言ってもいいですか?》

 彼女の声がわずかに震えている。

「ああ、どうぞ」

《お見合いをしたあのホテルで、今日会いたいです。時間は合わせます。わたしはいつでも出発できるので》

 会いたいと言われた瞬間、胸が躍った。まだこんなにも未練を残しているなんて、少しも心の整理なんかできていない。しかしそれを悟られないように冷静に答える。

「わかった、今から一時間後でどうだろう?」

《はい。わかりました》

 短い会話だったが、元気のないのが気になった。白木さんになにかあったら連絡がくるようにはしてあるが、あまり容体がよくないのかもしれない。

 でも一番の理由は俺との離婚だろうな。彼女の望んだことではあるが傷ついていないわけではない。

 今日呼び出された理由ははっきりとわからない。どんな内容でも受け止める。おそらく彼女が俺にぶつけてくれる最後の気持ちだろうから。

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