離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
和歌、和歌……。
いろんな表情の彼女の顔が思い浮かぶ。見合いの時のはにかむ顔。結婚式の凛とした表情。美味しそうにご飯を食べる時、うれしい時にちょっとだけ口角を上げるくせ。そして俺が名前を呼ぶと「はい」と言って振り向いた時の笑顔。
なあ、和歌。やっぱり俺、無理だ。
お前がいなくなるなんて耐えられそうにない。
赤信号がこれほどもどかしいと思ったことはない。今にも横断歩道に飛び出しそうな俺を周囲はじろじろと見ているが、そんなことはどうでもいい。
額から汗が噴き出て、心臓が破裂しそうなほど鼓動を打つ。呼吸も限界だ。それでも俺は信号が変わると猛ダッシュで和歌のもとを目指した。
病院に入るとすぐに看護師に「走らないで」と言われた。それもそうだと思いながら早足で総合案内に向かう。
「小田嶋和歌の夫です、和歌は、和歌はどこにいますか?」
額から顎につたう汗を手のひらで拭う。
「どこなんですか?」
「待ってください。今検索していますから」
気が動転している俺に余裕など一ミリもなかった。目の前でパソコンのキーボードをたたいている姿を目にして待っているこのわずかの時間ですらもどかしい。
「小田嶋さんは――」
「慶次さん!」
俺の体がすぐその声に反応した。声の方を振り返るといつもと変わらない和歌がその場に立っていた。
「和歌!」