離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 彼は髪を優しく撫でてくれる。またこの大きな手のひらで触れてもらえることがうれしい。しかし、次の彼の言葉にわたしは固まってしまった。

「でもどうして、俺に他に好きな人がいるって話になったんだ?」

「そ。それは……」

 結婚してから一度も手を出されていなかったから、だなんて言えない。

「なぁ、確かに俺が言葉足らずだったことが悪いし、七尾のことは誤解させてしまったけれど。それにしても飛躍しすぎてないか」

 慶次さんはわたしの顔を覗き込んだ。ジッと見られていると後ろめたくて目を逸らす。ごまかそうとしたのがばれたのか、彼はますます知りたがった。

「なあ、もうここまできたら隠し事はなしにしないか」

「それはそうなんだけど……言いづらくて」

 慶次さんの言う通りだ。これまでお互いにちゃんと話をしなかったからここまで関係がこじれたのだから、全部話してしまった方がいい。その方が気持ちが楽になる。

「本当に引いたりしない?」

「ああ、あたり前だろ。和歌のことなら全部受け止める」

 おそらく慶次さんのことだからその言葉に嘘はない。けれど言うのには勇気がいる。

 でもちゃんとした夫婦になるって決めたからには、ちゃんと言わなくちゃ。

 わたしは決心して口を開いた。

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