離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「昨日ここで病院から連絡を受けた時は心臓が止まるかと思った」

「心配かけてごめんなさい。あの男の子も無事みたいでよかったです」

 ここに来る前にもう一度、お礼の電話があった。事故に遭った子は今日も元気に登校したようでホッとする。

 天気がよく庭を歩くのにはもってこいだ。平日だし人も少ない。昨日は会社の創立記念日で、今日は先週土曜日出勤したから振替でお休みだ。

 昨日の時点では今日は一日泣いて過ごすだろうと思っていたのに、人生ってなにがあるかわからない。

「知らないと思うけど、見合いの直前に一度和歌を見かけているんだ」

「えっ。初耳です、変なところ見てないですか?」

 いったいどんな場面を見られていたのか。自宅で過ごしている時は本当に気の抜けた姿なので、そんなところを見られていたかと思うと恥ずかしい。

「経済界の大物を手玉に取っている姿を見て好きになった」

「手玉? わたしが? そんなことありましたっけ? それにその場面のどこに好きになる要素があるんですか?」

 ますますわからなくなってきた。混乱するわたしを見て慶次さんは楽しそうに笑っている。

「そういうところだよ。気が付かないうちに人を虜にする。なかなかの悪女だ」

「そんな! 濡れ衣です。わたしが虜にしたいのは慶次さんだけですから」

 言ってしまってハッとした。顔がどんどん熱くなり、慌てて下を向いて隠した。

「あの、聞かなかったことになりませんか?」
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