離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


「そうだ射水が悪い」

 入ってきたのは慶次さんだった。髪をオールバックにしたタキシード姿の彼はため息が出るほどカッコよくて、わたしは思わずジッと見つめてしまう。しかし彼は眉間にしわを寄せて射水さんを睨んでいた。

「主役がなんて怖い顔してるんだよ」

「誰のせいだと思ってるんだ。引っかき回されたんだから小言くらい言う権利はある」

 慶次さんが詰め寄ると射水さんは一歩下がった。

「俺が幸せになるのを見届けるだと? そんなことひと言も頼んでないし、都合のいいように使うな」

「いや、まぁそうなんだけどな」

 怒った慶次さんに、いつもなら言い返す射水さんもたじたじだ。

「で、どうするんだ。俺はこの上なく幸せになったんだ。お前も七尾とのこと真剣に考えるんだろうな」

 七尾さんはふたりのやり取りを黙ったまま見つめていた。

「まぁそれはそのつもり」

 射水さんのセリフに七尾さんは彼をにらみつけた。

「こんな男こっちから願い下げよ」

「待てよ、七尾。そんなに怒るなって」

「なによ、今さら」

 七尾さんの気持ちもわかる。しかしわたしも振り回された人の中のひとりだ。


 複雑な心境でふたりのやり取りをはらはらしながら見守る。もうひとりの被害者とも言える慶次さんはなぜだか笑顔だ。

「さて和歌、リハーサルがあるから行こうか」

「え、はい。でも」

「いいから」

 慶次さんに手を引かれてわたしは控室を出た。廊下を歩きながら確認する。

「あのおふたり大丈夫なんですか?」

「ああ、問題ない。いつものことだ。それに今回ばかりは射水も腹をくくっただろう」
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