離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
自分のために彼はいつも一生懸命だった。そう思うと胸がキュンとうずく。
視線でアイアンのガーデンチェアに座るように促されてそれに従う。ドレスの裾が地面につかないように気を付けながら。
「いったいなにがあるんですか?」
式までまだ時間に余裕があるとはいえ、ここでなにをするのか気になる。
「和歌と式を挙げる前にどうしてもやっておかなくちゃいけないことがある。これだ」
慶次さんがタキシードのポケットから取り出したのは、わたしたちの署名済み離婚届だ。
「あっ! それは。でもわたしの部屋にあったはずなのに」
縁起がいいものとは言えないけれど、なんだか捨てられなくてリビングのチェストに入れておいたものだ。
「和歌が大事なものを片付ける場所なら知ってる。無断で持ち出して悪かった」
そもそもあの部屋のオーナーはやっぱり慶次さんだった。彼の部屋なので自由にしてもらっても問題ないと思っている。
「それは別にかまいませんけど。いったいどうするんですか?」
彼は離婚届を手にして、テーブルの上にある意匠を施した真鍮(しんちゅう)の灰皿の上にかざした。
「こうするんだ」
すると取り出したライターでそれに火をつける。
「あっ」
声を出した時にはすでに離婚届には火がついていて、灰皿の上に置かれていた。
「これでよし」
慶次さんはすごくすがすがしい顔をしていた。
「ずっと気になってたんだ。だからふたりで処分しようと思って」