離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
まだ納得できてない様子だったが、そうこうしているうちに目的地に到着した。
わたしを出迎えてくれたのは、慶次さんと同じくらいの歳の男性だった。
「本日案内を担当させていただきます。よろしくお願いいたします」
「はい。こちらこそ」
彼はネットで内覧申し込みをした際にわたしが書いた個人情報を確認しながら、ちらっと慶次さんの方を見た。
「小田嶋和歌さま、本日はひとり暮らし用のお部屋を探していると伺いましたが、こちらはお兄さまですか?」
隣にいる慶次さんの顔がむっとなった。
「夫です」
「えっ、旦那さま?」
「そうですが、なにか?」
普段は誰にでも丁寧な印象の慶次さんが珍しく不機嫌を隠そうとしていない。
「失礼しました。いえ、単身用のマンションを探すということでしたのでまさかご夫婦でお見えになるとは思わなかったんです」
そのように誤解されても仕方ない。