離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「そうか、だが和歌はわたしの妻だ。そこだけは譲れない」

 彼の言葉に今さらながらときめいてしまう。実際はまだ籍を抜いていないだけなのに、慶次さんの口からそれを聞くとうれしい。

 でもきっと、夫婦で来たと言った方が女ひとりで部屋を探すよりも、スムーズにいくのかもしれない。これもわたしのためなんだ。

「あの、さっそくなんですけど。ネットで見た部屋を案内してもらえますか?」

 少し不機嫌な慶次さんが気になるけれど、早く内覧したいわたしは話を進める。

「はい。今なら車をお出しすることができますが」

「いや、現地集合で構わない。地図だけいただけるだろうか」

「かしこまりました。では現地でお待ちしております」

 慶次さんが地図を受け取った後、わたしたちは彼の車に乗り込んだ。

「和歌、ここの不動産屋はダメだ」

「えっ、だってまだ一軒も案内してもらってないんですよ」

 驚いたわたしは思わず声をあげる。

「あの接客態度を見ればわかる。やめておこう」

「そんなにひどかったですか? でもせっかくなんで見るだけでもしないと」

 わたしの言葉に慶次さんはまだ不満そうだ。

「わかった。まあ、これも勉強になるからな」

 慶次さんはナビに住所を登録すると、すぐに車を発進させた。

< 80 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop