離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く


 到着したのは築浅(ちくあさ)の五階建てマンションの三階の角部屋。すぐに鍵を開けてもらって中に入った。

「え~思ったよりも広い」

 家具などが一切ない部屋は、唯がひとり暮らししているマンションよりも広く感じた。

「リフォームはひと通り終わっています。駅やスーパー、コンビニも近く、人気物件です」

 確かにここに向かってくる時に暮らしやすそうな街だと思った。

「キッチンも広いですね」

「単身用ですけど、ちゃんとお料理できますよ」

 ひとりで暮らすことになっても自炊は続けたいと思っていたので、なかなかいい物件ではないだろうか。

「慶次さん、いいですよね。ここ」

 さっそくいい部屋が見つかったと思ってにっこりとして振り向くと、慶次さんは難しい顔をしていた。

「確かに設備なんかは、問題ないかもしれない。でも和歌、一番大切なことを忘れていないか?」

「え? 家賃ですか?」

 そのあたりは自分の給与に見合った部屋を内覧希望したつもりだ。

「違う、セキュリティだ」

「ああでも、ここなら安心ですよ。オートロックですから」
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