離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 不動産屋さんの言葉にホッとする。それならば安心だ。

「どうですかね、慶次さん」

 わたしは彼のもとに駆け寄って意見を聞いてみる。もしかしたらこのまま決まるのではないかという期待を持っていた。

「和歌、あれを見て」

 彼が指さしたのはベランダの外。そこには電柱がある。

「ベランダ側に電柱があるのは危険。ここから侵入される可能性もある。しかもここに来るまで見たが、ごみを廊下に出している部屋があった。おそらくこういったルールを守れない人がいると必ずと言っていいほどトラブルが起きる」

「え、そうなんですか!」

「ああ、だからここはダメだ」

「……わかりました。いいと思ったんですけど。次の部屋を見せてもらいましょう」

 わたしがちゃんと見ていないところまでチェックしてくれてて、さすがだな。ひとりで来なくてよかった。

 そうは思ったものの……。

 それから慶次さんは、見る物件のすべてにダメ出しのオンパレード。最後には不動産屋さんも呆れてしまって「もうお見せできる物件はありません」とさじを投げられ、帰宅の途についた。

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