離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
慶次さんが運転する車が走り出したと同時に、わたしは口を開いた。
「あの、慶次さんの出す条件って少し厳しすぎませんか?」
「そんなことない。家は生活の中心だから大切なんだ」
「それはそうですけど、慶次さんの言っている条件を全部加味していたら、一生決まりませんよ」
そもそもハードルが高すぎる。予算がふんだんにあるならまだしも、一年目のOLが払える金額なんだから妥協だって必要だ。
「ダメだ。今日でだいたい和歌が譲れない条件はわかった。だから今度は俺の知り合いの不動産屋に声をかける」
これはもうなにを言ってもダメだな。
これは一年半一緒にいてわかったこと。普段は優しくてわたしの意見も聞いてくれる彼だけど、とんでもなく強情になる時がある。そうなってしまっては素直に言うことを聞くほかない。
「わかりました。あの、でも四月一日の入社日には新しい部屋から出勤したいです」
「だったら、なおさら俺の懇意にしている不動産屋じゃないと無理だな。短期間でで引っ越しまで済ませるとなると、対応してくれる不動産屋も引っ越し業者もなかなかないぞ」
「うっ……それは確かに」