離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 三月、四月は新生活を始める人も多い。よって引っ越し業者などは予約を取るのも大変なはずだ。

自分がいかに無知な上に無謀なことをしようとしているのかわかった。

「俺はできるだけ和歌の希望は叶(かな)えてやりたい」

「それは、本当にありがたいと思っています。ありがとうございます」

 もうすぐ他人になる相手にも優しい。少しの間でも彼の奥さんでいられてよかったなと思う。

「しかし随分遅くなったな。どこかで食べて帰るか」

 時計はすでに二十時を回っている。確かにお腹がすいていた。

「あ、あそこはどうですか?」

 指さしたのはいつも行列ができているラーメン店。幸い今は、ふたりしか並んでいない。

「あんなところでいいのか?」

「あそこがいいんですよ!」

 わたしが言うと彼はすぐに車を駐車場に入れた。

 車を降りて列の最後尾に並ぶ。入口近くに置いてあるメニューを手にした。

「慶次さんはなににしますか?」

「俺はこれ」

 やっぱり! 彼が選んだのは一番シンプルなもの。あまりトッピングなどがのっていないメニューを選んだ。
< 84 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop