離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
「わたしもそれにします! 実はずっと来たいと思っていたんです」
慶次さんとラーメンを食べることがひそかにわたしの夢だった。別にここのラーメンでなくてもよかったのだ。彼と一緒ならば。
「そんなにうまいのか、ここのは」
「知りません」
「え?」
慶次さんがこちらに振り向き、驚いた顔を見せた。
「ごめんなさい、味は知らないんです。でもこういうところに一度慶次さんと来てみたかっただけで」
「ラーメン屋に?」
わたしは頷いて説明する。
「慶次さんはいつも素敵なお店に連れていってくれて、それはとってもうれしいんですけど、実は友達カップルがこういうデートしてるの聞いて憧れてたんですよね」
並んで待つ間にメニューを決めて、その後は他愛のない会話に花を咲かせる。そんななにげない時間を共有している話を聞くと羨ましかった。
「だから今日はとってもうれしいです」
わたしが微笑むと、慶次さんは複雑な顔をした。もしかして失礼だった?
「いえ、決して慶次さんとの食事が嫌だったわけじゃないんですよ。ただ――」
「こんなことくらい、いつでも叶えてやったのに。他にもあるのか?」
意外な反応に驚いた。しばらく考えてみる。